「事業だって、長生きしたい。」“好き”を起点にロングセラーを育てる、202010様のブランド哲学。

「事業だって、長生きしたい。」
そんな一言でブランドの世界観を伝えるコーポレートサイトが、2024年に誕生しました。
ホールディングスカンパニー 202010(ニイゼロニイゼロイチゼロ)様(以下、202010)は、シンガポールとマレーシアに拠点を置き、投資、ペットフード、グラフィックデザインという一見バラバラに見える3つの事業を展開する企業。しかし、そのすべてに共通する哲学がーー“ロングセラーを創る”という思想です。
本記事では、そんな202010が、なぜホールディングスとしてのブランドデザインを決意したのか。
そして、どのようにブランドのコアを言語化していったのかを、代表の 藤田 英輝 様に、プロジェクトの舞台裏とその先にある想いとともに伺いました。
1. 社名に込められた想いと、ブランドメッセージの確立
2020年10月、どん底の経験を経て生まれた社名。そこには藤田さんの覚悟と、ブランドに込めた強い想いがありました。
― 社名「202010」には、どのような想いが込められているのでしょうか?
「202010」という社名は、“2020年10月”を意味しています。これは、私にとって一番苦しかった時期を忘れないために付けました。当時は、資金が尽きかけていて、事業の継続すら危ぶまれていました。もっと単純に言えば、“お金がなかった”という状態です。でも、あの時期があったからこそ、今があります。あの大変な時期を絶対に忘れたくないし、同じ思いを他の起業家や出資先の企業にもしてほしくない。そんな“原点”を社名に刻むことで、自分たちの覚悟や思いを忘れずにいられると思ったのです。

― ブランドに対する考え方は、以前と比べてどのように変化しましたか?
2015年に SEGNEL Ventures という投資会社を立ち上げた頃は、「起業家を支援する投資家になりたい」という思いが強かったのです。Support Entrepreneurs for Growth to the NExt Level という言葉を掲げていたくらいですから。でも、自分で事業を立ち上げ、運営し、大変なことも経験していくうちに「自分がどうなりたいか」ではなく、「何を成し遂げたいか」という視点へと、徐々にグラデーションのように変わっていきました。例えば、街中で自分が立ち上げたブランドが今も売られていて、「自分が作ったものだ」と思える。それって、すごく幸せなことだなと感じるようになりました。長く愛されるものを残したいという気持ちが、いまの私の原動力になっています。
― 異なる3つの事業を、「ロングセラー創造企業」という軸でどう統一されたのですか?
これは本当に難しかったです(笑)。ペットフード事業、グラフィックデザイン事業、スタートアップへの投資事業・・・それぞれがバラバラに見えがちで、「シンガポールにいて、投資して、グラフィックデザインとペットフード事業をやっています」と言うと、めちゃくちゃ怪しく聞こえるじゃないですか(笑)。実際、「何でも屋なの?」って言われることも多くて。でも、自分の中では、それぞれに共通する思想がありました。それが「長く続くものをつくる」という視点です。投資にしても、自分でやってる事業にしても、いずれも“長く愛されるもの”を残したいと思っている。そこに共通項を見出したんです。



2. プロジェクトの進行について、そして生まれた言葉たち
言語化できていなかった自分の価値観や想い。それらをどう表現し、どう伝えるべきか。藤田さんが悩み抜いた「言葉づくり」の過程に迫ります。
― 今回、依頼いただいたきっかけを教えてください。
実は、以前ペットフードブランドのリブランディングを検討していた際、GEKIさんにご相談していました。その時はタイミングが合わず実現しなかったのですが、印象に強く残っていて。今回のコーポレートサイト制作は自分に決定権があったので、「やっぱりGEKIさんにお願いしよう」と。最初は自力で制作しようかとも思いましたし、言葉だけをコピーライターに頼むことも考えました。でもやっぱり、GEKIさんの熱さと、自分の頭の中を一緒に整理していただける姿勢に惹かれました。言語化が曖昧だったコーポレートミッションや価値観を、GEKIさんなら魂を込めて掘り起こしてくれると思ったのです。それが、お願いする決め手になりました。
― GEKIとのやりとりの中で、特に印象に残っている点はありますか?
3つあります。まず1つ目は、言葉の深さ。私たちの思いや背景を本当に深く理解した上で、言葉を一緒につくってくれた。単にキャッチーなコピーを出すのではなく、「なぜその言葉なのか」という背景を含めて、一緒に考えてくれたことがありがたかったです。
2つ目は、プロジェクト管理の正確さ。スケジュールやステータスの管理が徹底されていて、「うちのデザイン事業でもここまでやりたいな」と思うほどです。遅れが出た時も、巻き返しの計画まで立ててくれて、安心感がありました。
3つ目は、提案のバランス感。名刺デザインなどでこちらの希望をきちんと汲みつつ、+αで「こういうのもあります」と提案してくれる、そのバランスが絶妙でした。ちゃんと自分の声を反映してくれるし、同時に新しい視点もいただけて、とても助かりました。
― キャッチコピー「事業だって、長生きしたい」はどのように生まれたのでしょう?
このコピー、めちゃくちゃ気に入ってます。「事業だって、長生きしたい」って、まるで人間のような、擬人的な表現ですが、それが日本語としてすごく温かくて、私らの想いにぴったりでした。でも、英語にするときは違うアプローチが必要で、”Creating Value that Lasts.” と、よりストレートな表現にしました。これはGEKIさんと相談しながら、日本語と英語でどうニュアンスを変えるかを一緒に考えていきました。
また、キャッチコピーに続くストーリーについては、何度も修正を重ねました。私が自分の想いをバーッと伝えて、それをGEKIの氏家さんがまとめてくれて、それにまた私がフィードバックし、さらにブラッシュアップして…というやりとりをずっと繰り返しました。特に好きなのは「小さな挑戦と少しのファンから始まるサービスや商品。」という一節。事業の本質って、本当にそこなんですよ。最初は1人、2人のファンしかいなくても、改善を繰り返していくことで、いつしかロングセラーになる。そんな過程が丁寧に言語化されたことが、とても嬉しかったです。


3. ブランド構築による変化、そして未来へ
言葉が定まり、軸が生まれたことで、202010にはどのような変化があったのでしょうか。社内外の反応や実際の成果を伺いました。
― コーポレートサイトが完成した後、周囲からの反応はいかがでしたか?
とてもポジティブな反応を沢山いただきました。まず、「見た目がかっこいい」と言ってもらえましたし、内容についても「メッセージが熱くて伝わる」「これまでの事業がちゃんと繋がって見える」といった声を多くもらいました。唯一ネガティブな反応を挙げるとすれば、私の写真ですね(笑)。「ちょっと怪しい」とか「東南アジアの不動産エージェントっぽい」とか、社内でイジられました(笑)。でも、それ以外は好意的なコメントばかりで嬉しいです。
― コーポレートサイト公開後、具体的な成果として現れたことがあれば教えてください。
実際に動き出したプロジェクトが2件あります。ひとつは協業案件で、すでに始動しています。そしてもうひとつは、新たな出資案件。久しぶりに「ぜひ一緒にやりたい」と思える方と出会えました。問い合わせが増えたというよりは、コーポレートサイトを見てピンと来た方が行動してくださった結果だと思っていて、まさに自分たちのやっていることや想いが明確に伝わるようになったからだと感じています。
― ステークホルダーとのコミュニケーションに変化はありましたか?
あります。以前は「何をやっている会社なの?」と聞かれるたびに、説明が難しかったのです。投資もやってる、ペットフードもやってる、グラフィックデザインも…と言うと、すごく怪しく聞こえてしまっていました(笑)。でも今は、「202010って、ロングセラーを創造する会社なんです」と伝えることで、すごく納得していただけて、話がスムーズにつながるようになりました。まさにブランドが軸になってくれたと感じています。


― 意思決定や社内でのコミュニケーションにも変化があったのでしょうか?
とても変わりました。たとえば最近、社員から事業出資の頭出しがありました。その内容はたしかに利益は出そうだけれど、私らの“長く続く事業を作る”という軸とは違っていました。なので、即答で「やらない」と決めました。昔だったら、正直迷っていたと思います。でも今は、「自分たちが何を目指しているか」が明確だからこそ、意思決定がすごくクリアになりましたし、プロダクト開発でも「これは長く必要とされるものか?」という視点で社内の会話が進むようになりました。
― 「挑戦」という言葉がキーワードの一つになっていると感じました。藤田さんにとって、挑戦とは何ですか?
私にとって挑戦は、「人生を豊かにするもの」です。挑戦と聞くと、リスクや失敗がつきものだと思われがちですが、私は逆だと思っていて。挑戦しないと人生は変わらないし、成長もしない。社会も変わらない。小さくてもいいから、何かに挑戦することで、世界は少しずつ豊かになっていく、そう信じています。そしてそれこそが、ロングセラーにつながる価値観だとも思うのです。
― 最後に、202010が世の中に根付かせたい価値観について教えてください。
「挑戦」「柔軟性」、そして「長期で物事を見ること」。この3つです。
人生も、ビジネスも、マラソンのようなもの。すぐに結果が出ることだけじゃなく、長く走り続けることが大切だと思っています。そのためには失敗を受け入れること、協力すること、柔軟に変化していくことが必要不可欠です。私たち202010は、そうした価値観を信じ、体現していく会社でありたいですね。
4. 今後の展望
“ロングセラーを創る”企業として、さらに加速するために。藤田さんが描く未来と、次なる挑戦について伺いました。
― 今回のプロジェクトを経て、今後挑戦してみたいことや展望があれば教えてください。
今回のプロジェクトには本当に満足していて、正直なところ「もっとこうしたかった」と思う部分はありません。もし次があるなら、コーポレートムービーを作ってみたいと考えています。今回のコーポレートサイトに込めた思いやストーリーを、動画という別の表現手段で伝えることで、さらに人の心に響くのではないかと思っています。出資先の企業や仲間たちにも登場してもらい、実際に語ってもらうような動画ができたら、唯一無二になると思います。日本、シンガポール、マレーシア、それぞれの拠点で撮影して、それぞれの文化や価値観が混ざり合う202010らしい映像にできたら最高ですね。
― 最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
ここまで読んでいただきありがとうございます。202010は「ロングセラーを創造する企業」として、派手な花火のようなヒットよりも、長く愛されるブランドやプロダクトを大切にしています。それは「挑戦」や「柔軟性」、そして「長期的な視点」といった価値観と深くつながっています。もし、そういった考えに共感していただける方がいらっしゃったら、ぜひ一緒に何かできたら嬉しいです。そして今後、さらに多くの“ロングセラー”を世界に生み出していけるよう、引き続き挑戦し続けていきたいと思っています。

ひとつひとつの言葉の裏に、藤田さん自身が味わった経験や苦悩、そして未来への意志がにじむ今回のインタビュー。
202010 の掲げる“ロングセラー創造”という言葉が、ただのキャッチコピーで終わらない理由が、そこにはありました。
変化の激しい今の時代にこそ、「長く愛されるものを作る」という価値観が、より多くの人に届くことを願ってやみません。