信頼で仲間をつくる──アシュアード様が実践した採用ブランディングの本質。

「信頼で、未知を拓く。」というミッションを掲げ、サイバーセキュリティ領域で2つの事業を展開する株式会社アシュアード様(以下、アシュアード)。代表の大森厚志氏は、新卒で株式会社ビズリーチに入社後、社内課題を起点に、セキュリティ評価プラットフォームAssuredを立ち上げました。その後、2022年8月に法人化し、株式会社アシュアードとして脆弱性管理・SBOM対応に特化した yamory事業とAssurd事業の2事業を運営しています。
事業と組織が着実に成長を遂げる中、次なる挑戦として着手したのが、Assured事業における採用ブランディングの再設計でした。単に人材を集めるのではなく、「信頼」という価値観に共鳴する仲間と出会うため、組織としての思想や文化を “誰もが語れる言葉” へと翻訳する取り組みが始動しました。GEKIは今回、採用ブランディング全体の企画設計からコンテンツ制作まで、継続的に関わらせていただいています。
採用ブランディングの背景と狙い、そしてプロジェクトを通じて見えてきたアシュアードの組織的な変化について、代表・大森 様にお話を伺いました。
1. 事業フェーズとともに変わった“仲間づくり”のあり方
企業の成長に伴い変化した採用のあり方と、なぜ今採用ブランディングに取り組んだのか、その背景に迫ります。
ーアシュアード社の2つの事業について、立ち上げの背景や、会社としての運営体制について教えてください。
アシュアードでは現在、セキュリティ領域で2つの事業を展開しています。1つは「Assured事業」で、こちらはSaaSを提供する企業向けに、サービスのセキュリティを第三者の立場から評価する「クラウドリスク評価プラットフォーム」です。従来はExcelベースでチェックシートをやり取りする方法が主流でしたが、そもそも「信頼の基準」が明確に共有されていないことが大きな課題でした。私たちはそこに着目し、単なる効率化ではなく、信頼の可視化を通じて、提供企業と利用企業の間に確かな基準をつくることを目指しました。
もう1つは「yamory事業」で、こちらはオープンソースソフトウェアに潜む脆弱性を可視化・管理するためのクラウドサービスです。多くの企業がOSSやライブラリを活用していますが、「何が使われているか」「どこにリスクがあるか」といった情報の把握が属人的になっている課題がありました。yamoryでは、そうした脆弱性情報を自動で検知、一元管理することで、効率的で網羅的な脆弱性対策を支援しています。
もともとこの2つの事業は、ビズリーチの社内でそれぞれ異なる課題を起点に生まれました。立ち上がった時期も文化も異なる事業でしたが、それぞれが自立しながら成長していく中で、「より本質的に社会に貢献できる形」を目指す必要があると考え、アシュアードという1つの会社を設立しました。


ー採用ブランディングに取り組んだ背景と、今回の刷新で目指したことは何だったのでしょうか?
まず前提として、私は創業初期からブランディングの重要性を強く意識していました。これは、プロダクトを作る前の段階から、ロゴやサービス名に込める思想を非常に大切にしてきたからです。たとえば「アシュアード」という社名には、「保証された」・「確信のある」という意味を込めており、私たちが提供したい価値、つまり「信頼」を届ける会社であるという意志を表しています。ロゴ制作にも時間をかけ、価値観の整理から始めました。そうした文化の延長線上に、採用ブランディングも位置づけているのです。
今回、採用ブランディングに取り組もうと思った一番のきっかけは、事業フェーズの変化です。創業直後は、私自身が候補者一人ひとりに手紙を書くような気持ちで採用活動に取り組んでいて、以前の採用ページもその延長で、完全に私個人の想いを中心に構成されていました。実際、自社で内製していましたし、スタートアップとして「アシュアードとは何か」をしっかり伝えるためのブランディングという意識もありました。
ただ、事業が成長し、社員の数も増えてくると、もはや私だけが発信者でいるわけにはいかなくなります。採用も「仲間が仲間を呼ぶ」フェーズに入り、社員一人ひとりが自分の言葉で会社を語れる状態が必要になってきました。これまでのページは私個人の色が強すぎて、他のメンバーが使いにくかった。だからこそ、今回目指したのは、誰もが活用できる採用ブランディングです。「こういう会社なんです」と自然に伝えられる、再現性のある言葉にアップデートする必要がありました。
採用ブランディングが経営レベルの意思決定になったのも、まさにこの「発信の担い手がチームになる」という段階に移行したからだと思っています。加えて、制作プロセスを通じて社員が自分の仕事を言語化する機会にもなったことで、「自分の仕事に誇りを持てるようになった」という声も上がりました。外向けの取り組みであると同時に、組織の文化やアイデンティティを育てる取り組みにもなったと感じています。
2. ブランドは文脈の積み重ね——アウトプットの裏にある信頼関係
なぜ外部パートナーとしてGEKIを選んだのか。その決め手と、プロジェクトを通じて築かれた信頼のかたちを紹介します。
ー自社でデザイナーも抱えていた中で、なぜ外部パートナーに依頼する判断をされたのですか?
今回は、私たち自身の想像を超えるレベルまでアウトプットを高めたいと考えていました。ブランディング領域に精通した方々に関わっていただくことで、まったく異なるクオリティのものが生まれると確信していました。コピーやデザイン、構成の切り口など、領域のプロならではの視点が加わることで、世界観そのものが一気に広がるのです。実際、前回の採用ページでは外部デザイナーの方にコピーライティングをお願いし、強く印象に残るアウトプットを得ることができました。今回も、そうした体験をページ全体のクリエイティブに広げられることを期待して、依頼を決めたのです。
ー数ある外部パートナーの中で、GEKIを選んでいただいた理由を教えてください。
他社の実績もいくつか拝見し、理想に近いものもありましたが、決め手は初回の打ち合わせの感触です。代表の作左部さんが直々に参加してくださり、抽象度の高い話題にも真正面から向き合って言語化してくれました。「この方たちとなら、想像を超えるものが生まれる」と直感的に感じたのを覚えています。私たちは、一方通行で指示を出す関係ではなく、むしろ会話を通じて私たちの意図を深く掘り下げてくれるようなパートナーを必要としていました。GEKIさんは、まさにそのような姿勢で関わってくれた稀有な存在でした。
ープロジェクトの進行を通じて、印象に残っている点はありますか?
最も印象に残ったのは、GEKIさんの文脈を汲み取る力です。抽象度の高い話をしているにも関わらず、ずれたアウトプットが返ってくることがなく、提案や方向性は常に私たちの意図をしっかりと受け取ったうえでのものでした。そのおかげで、プロジェクトは非常に進めやすく感じました。もちろん、細部のグラフィック修正などは発生しましたが、核となるコンセプトに関するズレは一切ありませんでしたし、スピード感もあり、コンセプトに対する理解と実行力のバランスが取れているチームだと感じました。
実際、一度ご一緒したことで、「このチームなら安心して任せられる」という信頼が確立できたため、現在はyamory事業の採用ブランディングでも引き続きご一緒しています。私自身、良い関係は簡単に変えるべきではないという考えを持っており、GEKIさんとの関係もその一つです。ブランドとは「文脈の積み重ね」だと思っていますし、その文脈を共につくってきたGEKIさんだからこそ、次の段階でもより高いアウトプットが生まれると感じています。


3. 「語りたくなるページ」が仲間を呼び、文化を育てる
採用ページの刷新がもたらした社内外の行動変容と、文化への浸透ーー。今回の採用ブランディングにおける成果を具体的に伺いました。
ープロジェクトを通じて、どのような変化や効果がありましたか?
リニューアル後は、社内外の両方で明確な変化を感じています。一番大きかったのは、社員がシェアしたくなるページになったことです。もはや、代表である私がURLを送るだけのものではなくなりました。また、制作のプロセスを通じて、社員一人ひとりが自身の仕事と改めて向き合い、誇りを持つきっかけにもなりました。こうした副次的な効果も、今回の取り組みの大きな成果のひとつです。
さらに、「波を、起こそう。」というメッセージが、ただのキャッチコピーではなく、仲間の行動や思想としても浸透し始めていると感じています。採用数そのものは現在あえて抑えている状況ですが、応募してくださる方にも「事業を一緒に創る」という姿勢を持った方が明らかに増えてきました。単に「波に乗る」のではなく、「自分で波を起こしたい」と考えるような、当事者意識や挑戦心の強い方が自然と集まってくれるようになった印象です。


ーその変化は、どのようにして生まれたと考えていますか?
根本的には、設計思想そのものを大きく変えたことが要因だと考えています。これまではあくまで私個人が発信者でしたが、今回は「組織としての言葉をつくる」点を強く意識しました。また、ページ上に社員の顔を出すという構成も大きな要因の一つです。視覚的なリアリティが増すことで、閲覧者に「どんな人がこの会社で働いているのか」がより明確に伝わるようになりました。採用コンテンツにおいては、「顔が見えること」が信頼形成の上で非常に重要だと改めて感じています。


4. 進化し続けるための軸「信頼で、未知を拓く。」
採用ブランディングを経て見えてきた、企業としての次なる挑戦と、変わらぬミッションへの想いに迫ります。
ー今回のブランディングを経て、御社が見据えている次の一手は何ですか?
次のフェーズとして考えているのは、コーポレートサイトの構築です。現在はAssuredとyamory、それぞれの採用サイトが立ち上がり、個々のメッセージや価値が伝わる設計にはなっています。ただ、両事業にはそれぞれの成り立ちと文化があり、これまではそれぞれが自律的に成長してきた背景があります。だからこそ、次はその個性を損なうことなく、「アシュアードという会社」としての大きな文脈を社内外に提示することが重要だと考えています。事業間の接点が育ってきた今、組織全体の立ち位置や意味合いを再定義するフェーズに入ってきたと感じています。
ー2つの事業を統合する意味でも、「共通の軸」が必要になるのではないでしょうか?
まさにその通りです。Assuredとyamoryは、ともに社内課題から始まったという点では共通していますが、立ち上がりのタイミングや組織文化は異なっていました。それぞれが異なる環境で成長してきた経緯がある中で、今後は同じ方向性を見据えていく必要がある。そうした認識のもと、「信頼で、未知を拓く。」というミッションを新たに掲げました。今後はこのミッションを共通の軸としつつ、ビジョンを各事業ごとに描きながら、戦略レイヤーでも一体感をもった意思決定ができる組織を目指していきたいと考えています。
ー「信頼で、未知を拓く。」この言葉に込めた意味を改めて教えてください。
このミッションに至った背景には、「セキュリティとは何か?」という問いを私自身が長年考え続けてきたというプロセスがあります。サイバーセキュリティは非常に専門的かつ難解な領域に見えがちですが、私はこれを「信頼」という一つの言語だと捉えています。現代社会は情報もサービスも選択肢が溢れており、その中で最終的な意思決定の基準になるのは、「この人(企業/サービス)は信頼できるか?」という感覚ではないでしょうか。セキュリティはその信頼を裏付けるための仕組みであり、私たちが提供するサービスは、その「信頼のあり方」を構造としてデザインし、社会に実装していくものなのです。情報やサービスがあふれるこの時代において、誰を信じるか、何を信頼の拠り所にするかという新しい選択基準を社会に提供していくこと。それが、私たちの事業の本質であり、目指す世界観です。
ーこのミッションのもとで、今後の事業拡大についてはどう考えていますか?
まず前提として、言葉の定義は会社によって異なりますが、私たちアシュアードでは、ミッションを「目指していく方向性を指し示す北極星」のようなもの、ビジョンを「ミッションに向けたマイルストーン」と定義しています。将来的に事業を増やす可能性は十分にありますが、たとえそうであっても、ミッションは変えないと決めています。事業の内容や扱う技術が変わったとしても、「信頼で、未知を拓く。」という軸は変わらずに持ち続けたいのです。むしろ、軸が一つだからこそ、多様な事業を展開できるのだと考えています。
社員一人ひとりが、「自分はこの信頼をどう実装するか?」という問いに向き合いながら働くことができるように、ビジョンは事業ごとに設定して問題ないと思っています。ビジョンは、ある意味中期経営計画のようなものです。ですが、ミッションは“会社そのものの存在意義”に当たるものなので、そこはぶらしたくないと考えています。


ー組織全体でそのミッションを共有していくには、どんな仕組みが必要だと考えていますか?
組織というものは、拡大すればするほど「崩れていく」のが自然な状態だと思っています。人が増え、事業が複雑化することで、放っておけば遠心力が働き、組織は分解していくのです。だからこそ、意図的に求心力を生み出すための仕組みが必要になります。アシュアード社では、半年に一度のキックオフ、週次の夕会、月末の締め会、社員旅行や懇親会、制度改定、社内サーベイ実施など、多様な取り組みを通じて「つながり直す」設計を意識しています。こうした一つひとつの仕掛けが、組織文化を言語化し、メッセージとして社内に浸透させるための大切な手段となっていると考えています。

ー採用ブランディングは、そうした文化の醸成ともつながっているんですね。
まさにその通りです。私たちが行っているのは、“採用活動”というよりも“仲間づくり”だと考えています。
経営戦略や事業計画も重要ですが、最終的には「誰とやるか」が組織の強さを決めると考えています。たとえば私自身も、人材や採用、人事制度関連に3〜4割の時間を割いていますし、それだけ重視している領域です。組織運営の土台として、「自立・競争・自己変革」といった価値観をマネジメントポリシーとして掲げ、一人ではできないことを実現するために、なぜこの会社で働くのかを自分の言葉で語れるような土壌を整えています。そうした価値観に共鳴してくれる仲間と、信頼を起点に新たな社会の在り方をともにつくっていきたいのです。
採用ブランディングは、その入口であり、仲間との最初の接点となる場です。だからこそ、表面的なデザインやコピーではなく、「なぜこの事業をやっているのか」「私たちは何を大切にしているのか」がにじみ出るような設計でなければ意味がないのです。 今回のプロジェクトでは、まさにその本質に本気で向き合えたと感じています。
「波を、起こそう。」というメッセージは、いまや単なるスローガンではなく、社員一人ひとりの意思として根づいています。
アシュアードが目指すのは、単なる人材採用ではなく、価値観に共鳴する「仲間づくり」。
新たな採用ページは、その入り口として、「信頼のあり方」を丁寧に描く場となりました。
これからも信頼を起点に、まだ見ぬ未来をともに切り拓いていくアシュアードの挑戦に、私たちGEKIも引き続き伴走していきます。