INTERVIEW | 2026.04.21
渋谷スクランブルスクエア様が目指す「開かれた場所」
スクスクが育む、まちと施設の新しい関係性
東急・JR東日本・東京メトロの3社が共同開発し、2019年11月に開業した渋谷駅直結の大規模複合施設「渋谷スクランブルスクエア」。ショッピングセンター、オフィス、渋谷スカイ(展望施設)、渋谷キューズ(共創施設)などを擁するランドマークが、地域との新しい関係性を築くべく始動した「コミュニティ開発」プロジェクト。GEKIはイベントの企画・制作を担当した。そのプロセスと展望を、渋谷スクランブルスクエアの総支配人を務める二宮さんに伺った。
1. 「セールで人を呼ぶ」ことへの違和感
——まず最初に、今回のプロジェクトの背景からお伺いさせてください。当時、どんな課題感を持たれていたのかを改めて聞かせていただけますか。
二宮さん:大きく2つありました。1つは、セールに依存した集客構造への違和感です。商業施設って、特に夏や冬はセールが主軸になるじゃないですか。でもそれって、よくよく考えると、施設側がコントロールできない領域がすごく多いんですよね。
——テナント依存になる、ということですよね。
二宮さん:そうです。在庫状況や値引き率って、各テナントの事情で決まるので、施設として「こういう価値を届けたい」と思っても、それを担保できない。なので、「価格ではなく、体験やメッセージで人に来てもらう状態を作るべきではないか」という問題意識がありました。
——もう1つの課題は何だったんでしょうか。
二宮さん:地域との接点の薄さですね。本来であれば、開業後の数年間で地域としっかり関係性を築くべきだったんですが、2019年に開業してすぐコロナになってしまった。
そこから回復したと思ったら、一気にインバウンドも含めて来館者が増えて、「関係性ができる前に、人だけが増えてしまった」状態になってしまったんです。あともう一つ正直に言うと、渋谷スクランブルスクエアって建物として“シャープ”なので、少し「入りづらい」「とっつきづらい」印象を持たれていたと思うんですよね。
でも実際は、いろんな使い方ができる施設なんです。そこに対して、最初の心理的ハードルを下げつつ、接点を増やしていく必要があるという課題がありました。
——その中で、我々にご相談いただいた理由はどういうところにあったのでしょうか。
二宮さん:シンプルに言うと、「一緒に試行錯誤できるパートナーを探していた」というのが大きいです。当時は「こういうことをやりたい」という方向性はあったんですが、具体的な型があるわけではなかった。その中で、QWSなどの文脈もありながら、「この人たちとやれば、新しい形が見つかるかもしれない」という期待がありました。
2. 「渋谷にいるはずの人たち」を実在する存在に変えた
——今回のプロジェクトで実施したことを一言で表すと、どういうものだったと思いますか。
二宮さん:2年にわたり実施したイベント(24年:SHIBUYA ENNICHI MAEKET、25年:SHIBUYA STORY COLLECTIVE)を通じて、「渋谷で活動している人たちを“可視化した”こと」だと思います。
もともと、「渋谷には面白い人たちがいるはず」「そこに開いていきたい」という仮説があったんです。でも、それってあくまで仮説でしかなかった。それが今回の取り組みで、「実際に誰がいるのか」「どんな活動をしているのか」「どう関われるのか」が見えてきた。しかもそれが、資料やデータではなく、“顔が見える状態”で理解できたのが大きかったですね。



——最初の施策(夏祭りなど)については、どう振り返っていますか。
正直に言うと、イベント単体の完成度で言えば100点ではなかったと思います。でも、それでいいと思っていました。あの時期は、土台づくりのフェーズだったからです。やったことのないことに挑戦している以上、最初から完璧なものができるわけがない。むしろ大事なのは、「やってみて、学んで、次に活かすこと」なんですよね。なので、クオリティは80点でもいいけど、取り組みとしては100点だったと思っています。



——プロジェクトの進め方について、印象に残っていることはありますか。
二宮さん:やっぱり、フットワークの軽さと瞬発力ですね。通常の代理店さんだと、一度持ち帰って次回提案になることが多いですが、GEKIさんはその場で考えて、その場で返してくれる。これって単なるスピードの話じゃなくて、温度感を共有できるかどうかなんですよ。その場でやり取りすることで、「この人たちはこう考えているんだな」というのが伝わる。だから、“委託先”ではなく“一緒に作っている感覚”がありました。
3. 最大の成果は「施設としてのメッセージを持てたこと」
——実施後の成果について、どう捉えていますか。
二宮さん:一番大きいのは、「施設としてのメッセージを持てたこと」ですね。それまでの施策は、どうしても販促の延長線でしたが、この取り組みを通じて「開かれた場所でありたい」「地域とつながりたい」という意思を、明確に発信できるようになった。これはすごく大きい変化でした。
——他にも変化はありましたか。
二宮さん:はい。人の解像度が一気に上がったことです。「渋谷で活動している人たち」「将来的に一緒に何かできる人たち」は、これまでは“概念”だったものが、“具体的な人”として認識できるようになった。これって、実はすごく重要で。データや資料で理解するのと、実際に会って話して理解するのとでは、意思決定の質が全く変わるんですよね。
——一方で、今後の課題はどこにありますか。
二宮さん:一番は、「内輪で終わらせないこと」です。地域の人たちと接点はできてきた。でも、それだけでは足りない。ここでやることで、新しい人とつながり、コミュニティが広がって、そこが起点となってムーブメントが生まれる。そういう状態を作らないと、意味がない。「ここでやるからこそ何かが起きる」状態にすることが、次のフェーズだと思っています。


4. 今後の展望は「2期開業に向けた実験の積み上げ」
——今後、GEKIと一緒に取り組んでいきたいことを教えてください。
二宮さん:まず大きいのは、2期開業に向けた準備です。広場やイベントスペースができたときに「何をやるか」をその場で考えていては遅い。今の取り組みを通じて、その時に最大化できる状態を作っておく必要がある。つまり、今やっていることはすべて、未来に向けたテストでもあり、蓄積でもあるということですね。
——コンテンツの方向性としてはどう考えていますか。
二宮さん:一番大事なのは、「渋谷だからこそできること」です。例えば、海外の大型イベントを持ってくることもできると思います。でも、それはやりたくない。なぜなら、人が渋谷に来る理由は、渋谷が面白いからなので。だったら、渋谷の中から面白さを生み出すべきだと思っています。
——最後に、どんな施設を目指していきたいですか。
二宮さん:理想は、「常に何か面白いことが起きている場所」です。一発バズる施設ではなくて、継続的に新しい体験が生まれる場所。多様なコンテンツと継続的な発信、そしてコミュニティとの接続。この3つを回し続ける必要があると思っています。
